遺産の範囲の確定/弁護士法人アスタスク法律事務所(神戸)遺言・相続・遺産分割法律相談室

遺産の範囲の確定についてです。

 

第1 まず

 
「財産の名義は被相続人になっているけれども実際には他の相続人固有の財産である。」「財産の名義は相続人になっているけれども実際には被相続人の財産だったのであり相続財産に含まれる。」という主張がなされることがあります。
遺産分割に相続財産以外のものが含まれていれば分割協議全体が無効となることもあり得ますし,相続財産の一部を除外して遺産分割をした場合は除外した相続財産について再び分割が問題となります。

また,相続財産について消極財産(借入金などマイナスの財産)の方が積極財産(土地・預貯金などプラスの財産)より多い場合はすみやかに相続放棄などの手続を検討する必要があります。

 

 

第2 相続財産把握の方法

 
あなたが被相続人と長期間同居していた場合などは比較的容易に相続財産の全貌を知ることが可能ですが,あなたが「他の相続人の管理する遺産」の分割を求めようとする場合は,相続財産を正確に把握することは困難なことが多いです。
 

不動産登記事項証明書(管轄法務局で発行)・固定資産税の通知書・預貯金の残高証明書などの公的(あるいは準公的)証明書,被相続人が残した所得税の申告書・株式に対する配当通知など財産に関する書類などを手がかりに調査をしていきます。

 

 

以下,特に問題となることが多い「不動産」「預貯金」「貸金庫」についてご説明いたします。

  

  

1 不動産について


 

不動産について,不動産の登記簿上の地番や家屋番号が分かっている場合は,直ちに不動産登記事項証明書を取り寄せることができます。不動産登記事項証明書は,誰でも申請することができ,所定の登記印紙を貼付して申請すれば郵送でも取り寄せすることができます。

ただし,不動産登記事項証明書に記載されている内容が必ずしも現在の土地の状況と合致しているとは限りません。

縄伸びなどにより地積(面積)が異なっていることもありますし,不動産登記事項証明書上に地目が山林であっても,現状は宅地として利用されていることもあります(実際の土地の利用状況が,登記事項証明書上の地目と異なっている場合も多々あります)。「登記をしていない建物」が建っているということもあります。

 

従って,不動産については「現地調査」が不可欠となります。

 

 

 

土地の上に「建物」が建っている場合には,その建物が被相続人所有のものであれば問題はないのですが,第三者が所有している場合には,借地権などの存在を確認する必要があります(借地権設定の契約書など)。また,建物は,被相続人所有のものであっても,その建物を賃貸している場合には,賃借権などを確認する必要があります(賃借権設定の契約書など)。

 

 

* 不動産の金額は,他の財産に比べて高額になることが多いので,申告(相続税の申告が必要な場合)などにあたっては特に注意が必要な財産です。

 

 

 

 

 

 

2 預貯金について

 

被相続人が有した預貯金については,金融機関から被相続人の死亡日の残高証明書を取り寄せて調査します。
ところで,預貯金に関し,被相続人の死亡前後に一部の相続人が,無断で,引き出しあるいは解約をしている(と疑われる)ことがあります。

 

預貯金の移動状況に関しても金融機関は一覧表(取引明細書)を交付してくれます。

 

相続直前,直後に引き出されているものがないか?

 

相続直前に払い戻された(解約された)預貯金がないか?  

 

被相続人が生前していた預貯金で,家族名義・他人名義の口座がないか?

 

特定の相続人に送金されていないか?

 

被相続人が亡くなる前(特に亡くなる3~5年前にわたって)預貯金から多額の金額が引き出されたりしていないか?

 

貸金庫がないか(貸金庫利用料の引き落とし)?

などを確認しましょう。

 

 

なお,預貯金について,被相続人名義だけではなく,配偶者名義や子ども名義・孫名義などの預貯金も相続財産に加えなければならない場合があります(相続税の申告をした場合に,後日の税務調査(相続税の申告をしたら必ず税務調査を受けるというものでもありませんが)でしばしば問題とされます。)。

これは,名義は違っていても,その名義人の収入状況と整合性がなければ,その預金は被相続人が預金・貯金していた(その預貯金の出所が被相続人の財産)と考えられるからです。

 

 

 

3 貸金庫について

 

被相続人が貸金庫を利用し,財産を保管している場合があります。原則として,相続人全員の立ち会いうことになります。また,開扉の際に,公平を期するため公証人に同席を依頼する場合もあります。

貸金庫の調査については,金融機関によって必要な書類や手続きが異なりますので,当該金融機関に確認する必要があります。

 

 

 

 

 

第3 遺産の範囲の確定


遺産の範囲の確定につき当事者の合意が得られず,紛争が解決できない場合には,遺産分割調停・審判の申立をする前に,遺産の範囲につき訴訟で確定させる必要があります(①当該財産が自己の固有財産であると主張する側の相続人から所有権確認訴訟を提起する②当該財産が被相続人の遺産に帰属することの確認を求める遺産確認訴訟を提起する③当該財産が相続財産であると主張する側の相続人から共有持分権確認訴訟を提起する)。
また,遺産分割調停・審判の申立を行った後に,「遺産の範囲」につき争点となった場合には,家庭裁判所から「いったん申立てを取り下げて,「遺産の範囲」を訴訟で確定させた後に改めて申立てをしてください」旨の勧告を受けることが多いです。

 

 

第4 遺産分割の対象財産となるか否かにつき問題となることが多いもの

 

1 生命保険金請求権(被相続人が死亡したときに生命保険金が支払われる)
 

相続放棄をしても生命保険金は受け取ることができるのか?

遺産分割とは別に,生命保険金を受け取ることができるのか?

などという問題です。

 

①保険契約者(被相続人)が自己を被保険者とし,相続人中の特定の者を保険金受取人と指定した場合
→指定された者は固有の権利として保険金請求権を取得しますので,遺産分割の対象となりません。


② 保険契約者(被相続人)が自己を被保険者とし,保険金受取人を単に「被相続人またはその死亡の場合はその相続人」と約定し,被保険者死亡の場合の受取人を特定人の氏名をあげることなく抽象的に指定している場合
→ 遺産分割の対象とはならず,各保険金受取人は法定相続分の割合による権利を有します。

 

③保険契約者(被相続人)が自己を被保険者とし,保険金受取人を指定しなかった場合
→保険約款及び法律の規定に従って判断することになります。
保険約款に「保険金受取人の指定がない場合は,被保険者の相続人に支払います」との条項がある場合には,保険金受取人を被保険者の相続人と指定した場合と同じになりますので,相続人が固有の権利として取得することになり,遺産分割の対象とはなりません。

 

* 注意!!

上記のように,生命保険金が遺産分割の対象とはならない場合においても,「被相続人の死亡によって取得した生命保険金契約に基づく保険金でその保険料のうち全部または一部を被相続人が負担した場合」は,相続税がかかる対象財産となります。

ただし,被相続人の全ての法定相続人が取得した保険金の合計額が,500万円に法定相続人の数を乗じて算出した金額以下である場合は課税対象とはなりません

 


2 死亡退職金(民間企業の場合)

 
相続放棄をしても死亡退職金を受け取ることができるか?という問題です。

死亡退職金に関する支給規定があるか否かで場合分けをします。
支給規定がある場合は,支給基準,受給権者の範囲または順位などの規定により「相続財産に含まれるか否か」を検討します。支給規定により受給権者が定まっている場合は,その者固有の権利であり,相続財産には含まれません。
支給規定がない場合は,従来の支給慣行や支給の経緯などを勘案して個別的に「相続財産に含まれるか否か」を検討します。
従って,退職金支給規定などの確認が不可欠となります。

 

* 注意!!

上記のように,死亡退職金が遺産分割の対象とはならない場合においても,死亡後3年以内に支給が確定したものについては,相続税がかかる対象財産となります。

ただし,被相続人の全ての法定相続人が取得した退職金の合計額が,500万円に法定相続人の数を乗じて算出した金額以下である場合は課税対象とはなりません

 


3 遺産から生じた収益など(相続開始後の賃料収入,利子など)

相続開始から遺産分割までの間に生じた「遺産からの収益など」(遺産の土地の賃料収入,遺産の預貯金の利子)は,遺産とは別個の財産で,相続人がその持分(相続分)に応じてその権利を取得します。


4 金銭債務(相続開始前の債務=例えば,被相続人の生前の借金)

金銭債務は,相続により当然に各相続人に法定相続分で承継されますので,遺産分割の対象とはなりません。
ところで,遺産分割協議や遺産分割調停において,「相続人の1人が遺産を単独で取得する代わりに,債務(被相続人の借金など)も全額負担する」という内容の協議が成立することがありますが,相続人間でそのような協議をしても債権者(金融機関など)が承諾しない限り,他の相続人が債務(被相続人の借金など)の負担を免れることはできません。
→それを免れるためには,「相続放棄」(家庭裁判所に対して申立をします。ただし,申立には期間制限があります。)などをするほかありません。~詳細は,「相続放棄など」のページへ

 

5 生前贈与

 

相続の開始前(つまり死亡の日からさかのぼって)3年以内に被相続人から贈与が行われていないかを確認する必要があります。

 

 

 

→ 「トップページに戻る」はこちら  

 

→ 「Q&A(よくあるお問い合わせ内容について)」はこちらへ

 

→ 「遺産分割の大まかな流れ」はこちらへ

 

→ 「遺産分割の手段方法」はこちらへ

 

→ 「遺言書が見つかった場合」はこちらへ

 

→ 「相続人の確定」はこちらへ

 

→ 「相続分の確定」はこちらへ  

 

→ 「相続放棄など」はこちらへ

 

→ 「相続財産の評価」はこちらへ

 

→ 「特別受益」はこちらへ

 

→ 「寄与分」はこちらへ

 

→ 「登記や預貯金払戻請求」はこちらへ

 

→ 「相続税」はこちらへ

 

→ 「事務所案内」はこちらへ

 

→ 「業務内容」はこちらへ

 

→ 「料金」はこちらへ

 

→ 「お問い合わせ」はこちらへ

 

 

 

お問い合わせはこちらへ

 

弁護士法人アスタスク法律事務所

兵庫県神戸市中央区古湊通1丁目2番5号

DAIEIビル5階

TEL 078-351-2746

(電話受付:平日9時~17時。ただし,祝祭日,年末年始,ゴールデンウイーク期間,お盆前後は除く。)

FAX 078-341-8457

 

事務所代表者(ホームページ運営責任者)の弁護士国枝俊宏です。親切・丁寧な対応をモットーとしておりますのでお気軽にご相談下さい。

なお,法律相談は電話による事前予約制です。法律相談料は30分5400円(消費税込)です。 

 

 

→ 当事務所の交通事故問題専用ホームページ「神戸市の交通事故相談なら弁護士法人アスタスク法律事務所」はこちらへ。

 

→ 当事務所の離婚問題専用ホームページ「神戸・離婚相談センター」はこちらへ

 

→ 当事務所の不動産問題専用ホームページ「不動産(土地,建物,マンション,借地,借家)法律相談室」はこちらへ。

 

→ 神戸市北区(西鈴蘭台南五葉)で開催の出張法律相談会のホームページはこちらへ